・はじめに
京都大学医生物学研究所(旧ウイルス・再生医科学研究所)付属ヒトES細胞研究センターでは、ヒトの胚盤胞から胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、ES細胞)株を樹立しています。ES細胞は、無限に増え続ける性質と、身体のさまざまな細胞になる性質を持っており、必要な種類の細胞を制限無く創り出すことができると考えられています。このような性質をもった細胞を「多能性幹細胞」と呼び、他にはiPS細胞が知られています。
樹立したES細胞株は、医療機関や研究施設に分配し、ヒトの体ができる仕組みや病気の原因の解明のための研究に使用されています。将来的には身体の細胞、たとえば肝臓の細胞や目の網膜の細胞などを作製して、患者さんに移植して治療したり、薬の効果や副作用を確かめたりすることに利用できると考えられます。
ES細胞株を樹立するには胚盤胞が必要です。そこで、不妊治療のために胚盤胞を複数つくり凍結保存していたが、幸い治療が成功し、保存していた胚盤胞が不要となったご夫婦に利用の目的などを説明して、了承してくださった方から提供していただいています。
胚盤胞を提供いただいた方々にこの場を借りて感謝申し上げます。また、提供医療機関の関係者のみなさまにも多大なご協力をいただき、感謝いたします。
・これまでの経緯
1998年にアメリカで始めてヒトES細胞の樹立が報告されましたが、日本では指針が制定され2002年から樹立が開始されました。これまでに12株のヒトES細胞が樹立されています。 2014年にヒトES細胞を治療に使うために「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」および「ヒトES細胞の樹立に関する指針」が整備されたことをうけて、新たにこれらに適合したES細胞の樹立を行うこととしました。 樹立研究計画はウイルス・再生医科学研究所、提供医療機関の倫理審査の承認を得て、文部科学大臣、厚生労働大臣に計画の妥当性確認の申請を行い2017年6月に大臣確認を受けました。 大臣確認後に胚盤胞の提供手続を開始し、提供を受けた凍結胚を用いて京大ウイルス・再生研にて樹立を行いました。2018年5月に最初の1株が樹立されました。 ES細胞は、基礎的な研究や臨床応用を目指した研究を行う機関等へ分配されます。
・ヒトES細胞株の樹立と分配
・ヒトES細胞株の樹立状況については、こちらをご参照下さい
・ヒトES細胞株の分配申請は、こちらをご参照下さい
・ヒトES細胞株を用いた共同研究については、こちらをご参照下さい